既存杭の再利用|調査前に確認しておきたい2つの注意点

意外と知られていない、既存杭再利用の可否を左右する判断ポイントを解説します!

2025年9月22日更新

建物を解体すると姿を現すのが「既存杭」です。その既存杭を再利用して新築の建物を建てる、いわゆる「既存杭の再利用」は提唱されてから時が経っていますが、ここ数年特に再開発が盛んな都市部の建設現場で注目を浴びています。また、環境的観点からも、「持続可能な社会」の実現のため、既存杭の再利用は積極的に推進していくべき課題の一つです。
しかし、既存杭は取り扱いが難しく、再利用するまでに困難が生じることも事実です。
今回は、「既存杭等再使用の設計マニュアル(案)」※1および「既存杭利用の手引き」※2の文献の内容や弊社の経験・実績などを踏まえて、既存杭の再利用調査のメリット・注意点などを紹介します。

目次



1.既存杭が積極的に再利用される背景

既存杭の再利用が提唱されてから久しくなり、近年では再び既存杭の再利用が注目されています。その背景として、都市部での再開発や、地球環境への配慮などが挙げられます。
近年、特に都市部では再開発や建替があらゆる場所で行われていることを見かける場面が多くなりました。建替となると、既存杭は再利用するか撤去または残置することになります。既存杭を撤去する選択をした場合、大掛かりな工事が必要となります。都市部のような狭いエリアが多い場所では、困難が生じたり支持層を乱してしまう事や、既存杭引抜き後の埋め戻しの影響により新設杭の施工時にトラブルが発生する可能性が考えられます。そのため、既存杭の再利用が積極的に行われるようになってきています。
また、環境問題はここ数年で大きな関心を集めており、環境への配慮は、もはやどの業界においても欠かせない取り組みとなりつつあります。既存杭を再利用することで、資材の消費を抑えられるだけでなく、廃棄物の削減にもつながり、環境保全に貢献することができます。
このように、既存杭の再利用は、資源の有効活用が可能であり、環境保全にも寄与する有効な手段です。

急速載荷試験.JPG
急速載荷試験の様子


2.既存杭を再利用するメリット

既存杭を再利用するメリットは、主に3点あります。

①コスト面

既存杭を再利用せずに撤去を行い、杭を新設するとなると、撤去から新設まで膨大なコストが発生します。また、既存杭の撤去時に支持層を乱してしまい、新設杭の先端深度を既存杭の先端深度よりも深く設定しなければならなくなるケースも考えられます。しかし、既存杭を再利用すれば、撤去や新設の費用は削減が可能です。コストを抑えてプロジェクトを進めることができるのは、発注者にとっても非常にメリットだと言えます。



②工程面

コスト面と同様に、既存杭の撤去・杭の新設は大掛かりな工事となり、その分、日数も掛かってしまいます。しかし既存杭を再利用することで、杭の撤去・新設の工程を削減し、工期短縮の実現にも期待ができます。



③環境面

前項の「既存杭が積極的に再利用される背景」でも触れましたが、ここでも詳しく掘り下げていきます。そもそも、既存杭を撤去するとことは、廃材が発生します。そして、さらに新しい杭を造るとなると、資材が必要となります。
地球温暖化をはじめとした環境問題の観点からも、必要以上の杭の廃棄や製造は、地球環境上決して良いことではありません。特にCO2の排出量については、新しい杭の製造時の割合が多いため、既存杭を再利用することで、CO2排出量の削減効果も大きくなります。
世界中で環境保全が当たり前となっているこの時代、既存杭を再利用することは環境に優しい手段と言えるでしょう。



3.既存杭を再利用する際の注意点

既存杭を再利用する際は、その杭が今後も安全な状態で利用できるかどうかの判断が必要となり、設計者が責任を持って杭の状態を確認しなければなりません。
下記は既存杭を再利用する際の注意点となります。ここで挙げた内容以外にも注意点はありますので、慎重に計画・設計を行っていただく必要があります。



既存杭の品質が想定外だった場合


既存杭を再利用する際、既存杭の品質を調査により把握する前に設計を行うケースが多いです。そのため、既存杭調査により得られた品質と設計時に想定した品質の間に危険側の差異が生じると設計の大幅な変更が必要になってしまう可能性があります。
この様なリスクを低減させるために、事前にできるだけ既存杭の情報を収集することや早い段階で予備調査を行い、既存杭の品質をある程度把握しておくことが重要になります。
また、調査結果により、設計上期待していた性能に満たない杭と判断された場合は、既存杭に期待する性能を低減させる等の対策や既存杭を使用しないといった処置が必要になることがあります。この様な場合の対処方法や代替案をあらかじめ想定しておくことも重要になります。



地震時の水平力について


告示(平13国交告示1113号)以前に施工された杭は、水平力に対する検討が行われていない可能性があります。
既存杭を再利用する際は、既存杭の耐震設計が行われているか確認し、新設建物の水平力をどの程度既存杭に負担させるかなどの検討が必要です。また、場合によっては、杭を増設するなどの対策も必要になります。

コア削孔状況.jpg
コアを削孔している様子


4.一般的な調査内容(項目)

既存杭再利用の際の調査内容や調査数量は、事前の書類調査の結果や既存杭の再利用方法などを考慮して、建築主事との相談の上、設計者が決定する必要があります。
下記が一般的な調査項目となります。

 ①書類調査 ②既存建物調査 ③耐久性調査 ④健全性調査 ⑤支持力調査

①書類調査


既存杭の諸元や構造性能、施工状況等を設計図書や構造計算書、施工記録など等から確認します。特に、検査済証は重要な資料です。また、地震履歴を調べることも、既存杭の状況を推測する上で重要となります。これらの書類が無い場合は、調査項目・数量を増やすなど等の対応や、場合によっては性能評価機関の技術評定を受けることを検討する必要があります。


②既存建物調査


既存建物の不同沈下の有無を確認します。不同沈下が生じていると、支持力不足や健全性不良など、既存杭の支持性能に何らかの問題がある可能性が高く、再利用は困難と考えられます。
不同沈下の有無は、既存建物内または外周で水準測量を行うことで確認します。場合によっては、外観調査(構造躯体のひび割れや剥離、断面欠損の確認)と合わせて総合的に判断します。


③耐久性調査


既存杭のコンクリートや鉄筋の経年による性状変化(主に強度)を確認します。主な調査項目は、「コンクリート強度」、「コンクリートの中性化深さ」、「鉄筋強度」となります。


④健全性調査


既存杭について、設計図書と照合し、有害なひび割れなどの損傷有無を確認します。照合項目は、杭の配置や杭径、杭長、鉄筋の配置などです。損傷の有無は、IT試験やボアホールカメラなどで確認します。


⑤支持力調査


既存杭の鉛直支持力を確認します。試験法のうち、押込み載荷試験は信頼性が高く望ましいですが、反力杭や反力桁が必要になりますので、費用が高額になります。そのため、近年では、急速載荷試験を実施することが多いです。急速載荷試験では、重錘落下により試験を行うため、反力杭や反力桁が不要です。その分、押込み載荷試験と比較すると、費用が安価で工期も短くなります。



5.おわりに

今回は、「既存杭を再利用する際のメリットや注意したいポイント」について紹介させていただきました。既存杭の再利用を検討する際には、ぜひお役立てください。



【参考文献】
※1 出典:構造法令研究会〔編〕 「既存杭等再使用の設計マニュアル(案)」 ㈱構造計画研究所発行 2008.11
※2 出典:地盤基礎専門部会 杭の再利用促進WG 「既存杭利用の手引き-現在と将来の利用に向けて-」 (一社)日本建設業連合会発行 2018年11月



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